剣道なみあし独行道

真直ぐ構えない中段まっすぐかまえないちゅうだん

はじめに

皆さんは中段に構えるとき、どのように構えていますか?
9割以上の方が、竹刀を相手の正中線に向け、上から見たとき、自分の上体から直角に竹刀が出ているイメージで構えているのではないでしょうか?
しかし、「真直ぐ構えない」もかつてはありました。わたしは「真直ぐ構える」中段は、わざの習得を妨げるような気がしています。
今回は、昔はあった「真直ぐ構えない」中段について・・・

どう教えられましたか?

私が剣道を学び始めた頃(’95年ごろ)、『中段には2種類ある』と教えられました。

  1. 現在一般的な「真直ぐ構える」中段(相手から見ると、左拳が右拳に隠れる)。
  2. 左手の親指第一関節を中心に置き、剣尖は相手の左目を狙い、少し斜めになった竹刀で右甲手を守る。

1.は若い先生が、②は少し年配の先生が教えてくれ、どっちが正しいのか混乱した覚えがあります。

思い出したきっかけ

ただ、「真直ぐ構えない」中段はその時以来、指導されることもなかったので、すっかり忘れてしまい、ずっと「真直ぐ構える」中段で稽古してきました。
「真直ぐ構えない」中段を思い出したのは、木寺先生に胡桃回しを勧められたからです。胡桃回し(私は東急ハンズで購入した檜の玉で代用)をしていると、手の位置によって回りやすさが異なるのです。一番回しやすいのは股関節の前でした。これを剣道に活かすとすると、構えは真直ぐじゃなくなるな・・・と思った時に、小さい頃に教えられた「真直ぐ構えない」中段の記憶が鮮明に甦ったのです。

昔の教えはいかに?

昔の本を紐解いてみると

堀田祐弘(捨次郎)剣道極意(大正7年)
・・・右手は鍔際を握り、左手は柄元を握りしむるなり。而して両手共に小指環指(おやゆび)を締め、中指は軽くし薬指は尚軽く添うのみと為す、握りたる両卒(りょうて)は前方に差出し左手は後部臍の処二三寸離し、刀尖を敵の左眼に著け、敵の刀尖と交差して構えるなり。
中山博道 剣道手引草第一集(大正12年)
先ず左手は、竹刀の柄頭の部分を握るに、母指と示指との真中を、柄の脊に当てて、五指は平等の力を用ゆ、而してその剣尖を、敵の咽喉中央部に着く・・・中略・・・又其の母指第一関節は自己の臍の真前に位置せしめるのである。
野間恒 剣道読本(昭和14年)
中段の構は、剣尖を以て敵の咽喉部を扼する心持で、左の拳は臍から約一つ握り前下に置くようにして刀を持ち、・・・
高野弘正 剣道読本(昭和48年)
・・・左手の位置は上写真のように、へそを中心にしてひと握りか、ひと握り半のところに置き、・・・剣先のつけ方は、相手の目と目の中間につける方法、また左目につける方法とがあるが、最初は咽喉につけると言ったほうがわかりやすいと思う。
佐久間三郎 続剣道の手順(昭和63年)
剣尖を相手の両眼の中心に付け一足一刀の間合では剣尖が喉の高さになる。左の拳は臍の高さで一握りはなし拇指の第一関節の手脊がくる程度にし、・・・

堀田と中山は同じ神道無念流に連なる人です。なので同じような教えを受け継いでいたのかもしれません。
野間恒は中山博道からも教えを受けていましたが、ごく簡素な記述に留まっています。
佐久間も同じですが、別の著書(平成・剣道読本 上下)に収められている写真では剣尖は左目に付けているようです。
思い出すと、昔はそういう構えの先生方の方が多かった気がします。
真直ぐ構えるのが主流なのは、高野が書いたように、教えやすいから、が真相なのではないでしょうか・・・・

「真直ぐ構えない」中段のメリット

前置きが長くなりました。私個人は自分の経験から、竹刀剣道では「真直ぐ構えない」中段の方が利点があると思うようになりました。

あなたの構えを作ろう

中段はその昔は、正眼、青眼、晴眼、星眼など様々な形がありました(違いが分かりますか?)。なので中段と言えばこの形しかない、ではなくて、その人の体つきや状況に合わせて如何様にも変化するのが正解と思います。それが中段が『水の構え』たる所以でしょう。 先生にそう言われたからといって、いつまでもそれに拘泥するのではなく、様々な教えに触れて、工夫と改良を重ねてご自身の構えを作り上げることがまさに上達ということではないか、と私は思います。

能々稽古あるべし

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