小さい面
作成日:21.11.21
概要
なみあし剣道を身に付けるに従って、できるわざや動きが拡がり、上達を実感してきた中で、一つの大きな不満がありました。
それは、出端(特に相面)で打てないことでした。
相手と同時に打っても相手の竹刀が私の面を先に捉えるのです。
なみあし剣道に出会う前は使えていた小さい面打ちができなくなっていたのです。
剣道という枠組みで生きる以上、小さい打ちを再習得する必要が生じました。
大きい面打ちとの違い
なみあし剣道の最も基本的な打突法は、左膝を抜き、左腰を前進させることで左手を振り上げ、抜いて前進させた右足に重心を移しつつ、左足の前進とともに振り下ろすというものです。
筋力が必要なく、非常に楽なのですが、振りかぶりが大きくなりがちです。抜き技や仕掛けていく場面ではこれでも構いません。しかし、出端技はこれでは間に合いません。近い間合いから小さく鋭く打ってくるので、こちらが振り下ろそうかという局面では既に相手の竹刀がこちらに届いてしまうからです。
小さい面打ちは動きの順序を少し変えます。
- 左膝を抜き、左腰を前進させ、左手を振り上げず、前に押し出します。 ←これはほとんど同じ
- 前進する竹刀に引っ張られるように、右膝を抜いて、前進させます。 ←大きく違うところ
- 腕は振り上げず、極端には両拳を前に差し出すだけとします。
- 竹刀が相手に届いたときは、前足はまだ着床していません。
- 順番は、左膝の抜きー竹刀の前進ー竹刀が当るー右足の着床、です。
技のコツ
最も大事なのは、竹刀に体(特に右足)を引っ張ってもらう感覚です。決して足で床を蹴ったりしてはいけません。足が後ろに流れてしまいます。
もう一つは、竹刀を前に送り出す感覚です。私は振りかぶる癖があり、なかなか修得できませんでしたが、あることがきっかけでできるようになりました。
それは、水泳の平泳ぎです。平泳ぎのストローク(手を掻く方法)は、最後のリカバリーの局面で、脇を締めて、手を前に突き出します。この感覚を応用したところ、納得できる打ちができるようになりました。
打ち出すのが先で、右足は後、というのは非常に出足が素早くなるのと同時に、精神的に楽になります。
右足には荷重していないといっても0ではありません。どうしても右足の荷重を抜いて、前進させて・・・と動きが多くなり、足への意識が強くなって、肝心の機会を捉えることが疎かになってしまいます。
それに比べれば、手はフリーです。いくらでも動きます。
木寺先生から聞いたところによると・・・
一般的には、振り上げるときは肘を広げる(腕を内旋させる)と習うと思います。しかし、中には肘を広げてはいけない、とおっしゃる先生もいらっしゃるそうです。
その心は、肘を広げると胸鎖関節から動いてしまい、動きが大きくなりすぎるので、それを防ぐためなのだそう。
実践動画
見比べるとよくわかりますね。
大きい面(一般的には特大)
少し小さい面(一般的には大)
小さい面
派生技
- 出端面(相面)
- 切り落とし面
【余談】大きい打ち信仰
剣道は剣術・古流と同じであるべきだ、刀は小さく振ることはできないし、しない。竹刀も大きく振るべきだ。私もそう思っていました。 しかし、ちゃんと古流の形を調べたり、古流(直心影流薙刀術)を習ったりするうち、それは幻想であることがわかりました。 古流もたくさんの小さい技があるのです。むしろ、古流の方が小さい技を重視しているかもしれません。五輪書の「石火のあたり」の正体もこれかもしれません。 皆様ももし古流を目にする機会がありましたら、よく観察してみてください。
能々稽古あるべし
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