リバースステップによる出小手
作成日:24.8.19
他競技に学べ
リバースステップとは聞き慣れない言葉ですが、支点となる足を進みたい方向とは反対方向に動かすことで素早い移動を実現する足捌きのことです。
剣道には歩み足、送り足、開き足、そして踏み込み足の4種類しかないことになっていますが、他競技に目を移せば、様々な足捌きが使われていることに気づきます。剣道の足捌きは本当に4つで十分でしょうか?
リバースステップのサッカーにおける応用例
左に開いて打つ出小手は格好いい
現在、出小手というと、出端面(相面)などと同じように右足を前に進めて打つ人がほとんどです。
この打ち方には二つの問題が内在しています。
一つ目は面を取られるリスクがあることです。打つべき甲手は自分から見て左側にありますので、大抵の剣士は右足を左斜め前に出すことで剣尖を左へ運んでいます(1)。左に向かって踏み込むことは相手の竹刀に自分の体を近づけることにもなり、面を打たれる危険性は高くなります。
二つ目は残心の問題です。剣道形のように打突した後、相手に正対して反撃に備えるのが残心です。しかし現実には、その場で屈んだり、横を向いたりして、面打ちを避けるのに精一杯の人も少なくありません。これでは反撃に備えるどころか、体当たりで飛ばされたりする恐れさえあります。勿論打ち損ねた後に二の打ち、三の打ちをすることもできません。
そういうことから開き足で左に捌いて出小手を打つというのはごく自然な発想と思われますし、実際かつてはごく一般的な技術でした。
左に捌いて打つのは難しい
では、開き足の出小手が廃れてしまったのはなぜでしょうか?
まず、最初に思い当たるのは、単純に馴染みの無い動きであることです。右足前で、かつ前後の動きでしか練習したことのない剣士にとっては、開き足で左に捌くというのは難しいことですし、右足前で前に打っても一本取れるのに、敢えて開き足で打つことに意義を感じられないのだと思います。
次に技術的側面から言うと、面の打ち方が変容していることが挙げられます。振り上げない面打ちで取り上げたように、現代では面打ちの動作が非常に小さく(直線的)、速くなっています。相手の竹刀に邪魔されて剣尖を左へ持っていけなかったり、左へ開く前に面を打たれてしまったりするのかもしれません。
いづれにせよ、開き足の出小手は現代では使い難い技になってしまったようです。
どうやって打つのか
環境や相手が変わっているのですから、こちらも変わらねばなりません。リバースステップを取り入れましょう。
- 中段に構えます。この時はまだ左足荷重です。
- 機会に応じて、右足荷重になります。
- 相手が面にくる気配を感じたら、右足に荷重したまま、右足だけ右に素早く移動させます。(顔、胴体の位置はそのまま)
- 体が左に移動するのに合わせて、相手の右甲手を打ちます。
- もし甲手を打ち損ねたら、すかさず面や胴を打ちます。
- 相手の後打ちを警戒しつつ、相手に正対して残心を示します。(剣尖は喉または右目につける)
リバースステップの効用
試してもらえれば分かりますが、リバースステップを用いると、断然甲手を捉えやすいです。なぜでしょうか?
相手の打ちに合わせやすい
相手の動作・打つ気配に合わせて、右足を動かすので、タイミングがとりやすいです。足を動かす方向が違うだけで、出端面とほとんど変わりません。
移動速度が速い
右足が着地した瞬間に生じる大きな摩擦力が体を左向きに加速させるため、普通の開き足の出小手より移動速度が速くなります。
分かり難い人は、足幅を狭めた状態と広げた状態とで、片足を浮かした時にどちらが速く動けるか試してみて下さい。自重と衝撃力の違いはあれど違いは体験できます。
相手を右に振ることができる?
右足を右に動かせば、相手からは左へ動こうとしているように見えるはずです。こちらの右足が動いた瞬間に、相手は思わず左(自分から見て右)に向かって面を打とうとしてしまうのかも知れません。相手が右を向けば、自分が左に移動する距離は変わらなかったしたとしても、相対的には大きな角度がつき、甲手を捉えやすくなります。
リバースステップは使える
おそらくこれがリバースステップによる打突を文字に著した最初の記事だと思います。
ただ、木寺先生によると、このリバースステップによる出小手を使う剣士は過去にいたそうです。ただそれが無意識の内に行われていた為か、袴に隠れていて誰も気づかなかった為か、はたまた邪道と見做された為か、理由は分かりませんが、一般化することはありませんでした。
リバースステップは出端面(相面)、面抜き胴、面抜き逆胴、退き小手、退き胴など他にも応用できます。これらの技に苦手意識がある方は是非一度試してみて下さい。きっとその成果に驚く筈です。
実践動画
Coming soon...
派生技
- 出端面(相面)
- 面抜き胴
- 面抜き逆胴
- 退き小手
- 退き胴
参考文献
- スキージャーナル、実戦のための剣道講座、小川春喜、p63、2001年
能々稽古あるべし
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