剣道なみあし独行道

なみあし式上段対策 〜その2〜 攻め編

概要

上段って強いイメージがないですか?なぜでしょうか?振りかぶる必要がなくて打ちが速いから?
それも理由の一つですが、実は上段はとても合理的な構え方なんです。一方、それに対する中段の剣士のほとんどは合理的な体の使い方をしていません。
現代剣道と定石とされる上段対策は実は相性が良くないと思います。動作の原理に目を向けて、合理的な上段対策を作り上げましょう。

右回りに攻めるは本当か?

今まで、上段への対応としては、左小手を脅かしながら右回りに攻め込んでいく、というのが定石とされていきました。しかし、これは平正眼の構えと共に現代剣道と剣術における技術とを混同してしまっています。

不思議なことですが、人間の習性として右に足を運ぶと、右足に体重が乗ります。すなわち右荷重となります。右足前で打突する技術しか身につけていないと、この状況では非常に技が出しにくいのです。本来ならば、右に体重が乗れば、次に動かす足は左になります。つまり左足前で前進するか、横に出るか、後ろに引くかが合理的な動きと言えます。残念ながら、現代剣道では左足前のわざは途絶えてしまったために、右足荷重で打たざるを得ません。
右足前で打突することを前提とすると、右回りではなく、むしろ左回りとした方が合理的です。左足を左に進め、左足に荷重したところで相手の打突を誘えば、右足前で打つのに最も好都合な体勢となるからです。

上では、上段に対する側の視点から右回りが合理的でないことを説明しました。次は上段を執る方からの視点で見てみましょう。
上段からのわざというのは、現代剣道においては左片手打ちが主体です。この時、体の向きと腕の伸びる方向を考えると、実は真正面ではなくて、左方向(ほぼ左横)に打っていることがわかります。つまり、中段側としては右に回ることはわざわざ上段に打たれに行っていることになります。また相手が自分の左小手を狙おうと左方向に回ると、こちらは左足を踏むことにアクセントをつけて動くことになり、左足荷重が導かれます。相手は右足荷重なので打ってくるには一度左に載せ替えなければなりません。その一瞬の動作の無駄と振りかぶりがないことが相まって中段剣士を打つことができるのです。

上段に対する足遣いは

では、どのように攻めれば良いのでしょうか?(ここまで読んでいただいた方は、だいたいお分かりでしょうが・・・)

左に攻め込む

構えは平正眼、霞もしくは八相、いずれでも構いません。相手に片手小手がなさそうなら霞か八相が強力な選択肢となるでしょう。
構えを執って左へ、左へと攻めます。最も脅威である片手面を出し辛い方へ入り込んでいきます。霞や八相に執ったときは、竹刀の影に身を置くようにします。特に八相は左小手が弱点となりますので、左小手を守らなければならないからです。
平正眼の場合は左、左と攻めておいて、相手が打ってきたらそのまま出小手などを狙いましょう。

右に攻め込む

基本は左を狙う方が簡単だと思いますが、左荷重がきちんとできている剣士や左足前で打つことに躊躇いのない剣士なら右に攻めて行っても問題ないでしょう。
右に攻めるときの構えは、平正眼が一番です。霞も悪くはないと思います。八相は悪手です。

前に攻め込む

実は最もシンプルで強力と思われるのが前に進むことです。ただし足は歩み足とします。というのは上段が強い理由の一つに、相手に緊張を強いて、こちらの思惑通りに動かすということがあります。我々は上段と相対すると、『片手打ちは速いぞ』とか『左小手を狙わなければ(たいして練習したことないけど・・・)』とか様々な考えが脳裏に浮かび、少なからず緊張してしまいます。やがて緊張に耐えられず、機会でもないのに打ちに出てしまいます。上段はそれが狙いです。剣道は先に動いた方が負けです(隙をみせることになるから)。しかも片手打ちは早いですから勝てる要素がありません。

普段我々が使っている送り足というのは動きにリズム(アクセント)が存在します。アクセントは緊張をもたらします。緊張したくないのに、わざわざ自分で緊張しているのです。
一方、歩み足は緊張がほとんどありません。普段から繰り返している動作ですから。ゆるゆると歩み足で前に進みます。きっと相手は打ってくるはずです。そうなれば形勢逆転、緊張するのは上段側となります。打ちに応じて出端でもなんでも打って下さい。
弱点としては、右足前でも左足前でも自由自在に打てないといけないことです。なみあしはこれが可能となります。

実践動画

Coming soon...

派生技

能々稽古あるべし

目次に戻る