右足に乗って右脚を抜く打ち
作成日:23.3.7
概要
なみあしの技術としては少し特殊ですが、覚えておいて損はありません。 これができるようになれば、稽古はもちろん審査も試合も恐いものはないでしょう。
なみあし剣道の弱点
なみあし剣道は右足前で構え、左足に荷重したところから、右足前で打つのが基本です。慣れてくれば、右足前の構えから左足を出して打突したり、左足前の構えから打突したりすることもあります。
しかしそれだけでは、対応できない場面に遭遇することがあります。例えば、右足を進めて相手を攻めて(誘って)みたものの、相手が乗ってこなかったとき。なみあしの基本に従えば、左足に乗り直して仕切り直すか、右足に乗り切って左足で更に攻めるか、どちらかになります。
いづれにせよ、前後にも左右にも動きにくい、荷重(軸)の切替えの瞬間(居付き)が生じます。ここを打たれると為す術がありません。これは現代剣道の弱点でもありますが、左右軸の切替が特徴であるなみあし剣道では特にそう感じやすいでしょう。
右足荷重から右脚を抜いて打つべし
そこで標題の技術が必要になります。
実は皆さん知らない内にこの技術を遣っているのですが、改めてやってみようとすると難しいもの。
いくつかコツを挙げておくので参考にして下さい。
練習方法
直立姿勢から
普段通り、両足を揃えたところから、爪先の荷重を抜いていくと、思わず体が前に倒れそうになることを体感して下さい。
構えたところから1
右足前・左足荷重の中段に構え、体を静止させて下さい。左踵を床に着けられる方は着けた方が分かりやすいでしょう。
このとき、左踵からは体を前進させようとする力が、右爪先からは体を後退させようとする力が生じ、両者は平衡しています。まず、この力の掛かり方をよく感じて下さい。
それを理解できたなら、右爪先の荷重を右踵に移していって下さい。爪先を上げていく感覚、或いは踵を床に着けていく感覚です。左足に荷重を移すわけではないことに注意。爪先の荷重が抜けるに従って、体が自然と前に倒れ、思わず右足が前に出てしまうはずです。
構えたところから2
次に右足に荷重したところから同じことをしてみましょう。
左足荷重の構えから、右足に乗り換えます(右軸になる)。同じように右爪先の荷重を抜いていくと、体が倒れて、右足を前に進めたくなるはずです。
右足を前に進めるときは、やはり一足長程度で十分です。
構えたところから3
ここまでできたら、もう身についたも同然。次は左足荷重の構えから、右足を前に進めます。右足が床に着いたら、右足に乗りつつ、爪先の荷重を抜いて、踵に荷重します。最初から爪先に乗らないで踵に乗るのも良いでしょう。やはり、体が勝手に前進するはずです。上手くいかない人は上の3つコツを思い出して下さい。
尚、右足を送る際の左足は床に着いているだけです。床を蹴ろうとも、体を支えようとしてもいけません。ただそこにあるだけ、受動的に使うのが4つ目のコツかもしれません。
最後に左膝を抜いて前に送りましょう。現代剣道との大きな違いはここです。多くの剣士は左脚を後方に突き出し、あたかもシーソーのように体を大きく前傾させることで距離を稼いでいますが、格好悪いので。
実は・・・
上で知らない内に遣っていると書きましたが、どの場面か分かりましたか?
答えは出小手、そして、いわゆる「一歩攻めて面(小手)」です。いつの頃からか、遠間から送り足で一歩間合を詰めて、その勢いのまま打つことが常態化してきました。(この間合を詰めることを「攻め」と言ってしまうことは、剣道の技術を大きく退化させていると私は思います。)間合を詰めたら、左足に乗り直すか、剣道形のように左足を出して打つのが本来の剣道の原則ですが、強い人は乗り換えずに右を抜いてそのまま面に飛び込んだり、相手の手元が浮いたところを小手に行ったりしています。
そう、右足に乗って右脚を抜いて打つことは、現代の右足荷重剣士の得意とするところで、我々が捨ててしまった、あるいは身に付かなかった技術と言えるでしょう。
この打ち方だと、基本の左を抜く方法より前へ出る距離も竹刀の振り上げ幅も小さくなりますので、近間以下の出端技に向いています。
間合や機会に応じて自在に足を使い分けられるようになれば素晴らしいですね。
派生技
- 出端面
- 出端小手(出小手)
参考文献
能々稽古あるべし
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